サービス付き高齢者向け住宅の誕生
サービス付き高齢者向け住宅とは、高齢者の居住の安定確保に関する法律(平成十三年四月六日法律第二十六号)等の一部を改正する法律(平成二十三年四月二十八日法律第三十二号・ 平成二十三年十月施行)により定められた住宅です。
サービス付き高齢者向け住宅を理解するには、この、高齢者の居住安定確保に関する法律等の一部改正について理解する必要があります。
この法律改正の背景には、
- 高齢者単身・夫婦世帯の急激な増加。
高齢者単身世帯及び高齢者夫婦世帯のみの世帯数が、2010年1000万世帯であるものが、2020年1245万世帯と、10年間で245万世帯増加することが見込まれている。 - 介護保険の要介護認定を受けた方が利用できる、施設介護サービスの特別養護老人ホームへの入居申込の現況が、要介護状態区分で、介護度の低い方からの申込も多い状況にある。
特別養護老人ホームへの申込者数の内3分の1程度の方が、要介護1・2と比較的軽度な介護状態にある。
- 高齢者住宅は、諸外国と比較して不足している。
全高齢者に対する介護施設・高齢者住宅等の割合について、日本は、施設系3.5%・住居系0.9%(2005年)に対し、それぞれ、デンマーク2.5%・8.1%(2006年)、英国3.7%・8.0%(2001年)、米国4.0%・2.2%(2000年)となっている。施設系については、日本は、諸外国と比べても遜色ないが、住居系はあきらかに不足している。
このような社会背景において、国土交通省では、平成22年5月17日成長戦略会議の中で、
急増する高齢者向けの「安心」で「自立可能」な住まいの確保
~少子高齢化の進展を地域の活力創造の転機へ~
・将来目指す姿、あるべき姿
急速に少子高齢化が進展する我が国において、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らす住まいを確保する。【戦略目標:2020年目途】高齢者人口に対する高齢者向け住まいの割合を3~5%とする。
とした。また、平成22年6月18日 新成長戦略が閣議決定され、その中では、
急増する高齢者向けの生活支援サービス、医療・福祉サービスと一体となった住宅の供給を拡大するとともに、リバースモーゲージの拡充・活用促進などによる高齢者の資産の有効利用を図る。
とされた。さらに、平成22年8月29日 総理指示として
孤立化のおそれがある「高齢単身・夫婦のみ世帯」支援について
2012年介護保険改正に向けて、厚労省をはじめ関係省庁に、次の点を指示した。
(1)介護保険の基本目標の追加
・『孤立化のおそれがある「高齢単身・夫婦のみ世帯」の生活支援』
(2)「高齢単身・夫婦のみ世帯」を支える『新型サービス』の全国普及
・介護保険は、これまで「家族同居世帯」を標準としたサービス中心であったが、今後は、「高齢単身・夫婦のみ世帯」を支える『新型サービス3本柱』の全国普及を目指す。
『新型サービス3本柱』
① 24時間地域巡回・随時訪問サービス
② 高齢者向け住宅(見守り付き高齢者住宅・住み替え支援)
③ 認知症支援(徘徊SOSネットワーク、予防・治療・支援の一環サービス体系、成年後見)
以上のような、社会背景と経緯から、高齢者の居住安定確保に関する法律等の一部改正がおこなわれ、サービス付き高齢者向け住宅が誕生するに至りました。
次に具体的内容について見ていきます。