1.高齢者専用賃貸住宅とは何か
さて、高齢者専用賃貸住宅とは何でしょうか。
この点を正確に理解する上での基本は、条文を確認することです。
(平成十三年八月三日国土交通省令第百十五号)
第3条第5号一部抜粋
「賃貸住宅の全部又は一部が、専ら自ら居住するため住宅を必要とする高齢者又は当該高齢者と同居するその配偶者(婚姻の届出をしていないが事実上夫婦と同様の関係にあるものを含む。以下同じ。)をその賃借人とするもの(以下この号において「高齢者専用賃貸住宅」という。)」
これが条文に登場する「高齢者専用賃貸住宅の定義」です。
ようするに「建物の全部又は一部について、専ら高齢者を賃借人とする賃貸住宅」ということになります。そもそも要件である「高齢者」ですら何歳以上のことなのか実はハッキリしていません(一応ここでは60歳以上としておきます。)
この定義にはバリアフリー構造の必要性といった要件は含まれていない点に注目です。
*平成22年3月1日の高齢者の居住の安定確保に関する法律の一部改正の中で、高齢者円滑入居賃貸住宅としての登録基準が下記の条件になっております。
①各戸の床面積について
・床面積が25㎡以上であること(共用部分がある場合は18㎡以上で高齢者居住安定確保計画で別に定める場合にはその面積とする。)
②構造及び設備について
・原則として、各戸が台所、水洗便所、収納設備、洗面設備及び浴室を備えたものであること(共用部分に共同して利用するために適切な台所、収納設備又は浴室を備えることにより、各戸に備える場合と同等以上の居住環境が確保される場合又は高齢者居住安定確保計画に定めた場合にあっては、この限りではない)
③賃貸の条件について
・前払家賃、サービス対価前払金、一時金(敷金を除く。)の算定の基礎が書面で明示されており、かつ国土交通大臣が定める保全措置が講じられていること
・契約一体型サービスである場合には、当該サービスの内容及びその対価の概算額が書面で明示された契約と賃貸住宅の賃貸借契約を別に締結すること
今回の改正法によって、高齢者円滑入居賃貸住宅(高齢者専用賃貸住宅を含む)は住生活基本法における最低居住水準を満たした「住宅」としての質を確保することが義務づけられることになりました。
しかしながら、この改正案でもバリアフリー構造であることは要件となっておりません。
もちろん、高専賃は高齢者のみを入居対象としていることから、その多くは高齢者の生活を考慮したバリアフリー構造になっているなど、高齢者に特別な配慮をした住宅となっています。しかしながら、これは企業努力であって、義務ではないということです。
どうしても高齢者専用賃貸住宅という言葉のイメージで、高齢者にやさしい住宅であると思われがちですが、バリアフリーとは無縁の築30年の木造アパートであっても高齢者専用賃貸住宅として登録をすることもできます。
したがって、至れり尽くせりのハイグレードな高専賃から、ボロボロの木造アパートの高専賃まで、まさに玉石混淆といえる状況がそこに生み出される可能性は改正法施行後も引き続き存在します。
そのため、高齢者住宅を探す方は、よく対象物件を選定しなければなりません。
この高齢者専用賃貸住宅については、高齢者住宅財団のホームページで検索することができます。登録情報にはバリアフリー構造かどうかといった点も掲載されていますので判断材料の1つになると思います。
ここまでの解説で、高齢者専用賃貸住宅が「専ら高齢者を賃借人とする賃貸住宅」であることをご理解いただけたと思います。
それでは次に有料老人ホームとは何か?を見ていきましょう。