3.高齢者専用賃貸住宅は有料老人ホームか?
それでは、いよいよこの問題について考えていきましょう。
まず、高齢者専用賃貸住宅の定義を思い出してください。
「専ら高齢者を賃借人とする賃貸住宅」でしたね。
つまり、契約の当事者及び契約形態(賃貸借契約)に注目した定義です。
これに対して有料老人ホームの①の定義はどうでしたでしょうか。
①「老人を入居させ、入浴、排せつ若しくは食事の介護、食事の提供又は洗濯、掃除等の家事又は健康管理の供与をする事業を行う施設であって」
となっていました。
これは、契約の当事者及び建物のサービス実態に注目した定義です。
したがって、専ら高齢者を賃借人とする賃貸住宅で、入浴、排せつ若しくは食事の介護、食事の提供又は洗濯、掃除等の家事又は健康管理の供与をする事業を行う施設である場合には、高齢者専用賃貸住宅の定義に該当するとともに、有料老人ホームの定義にも該当する可能性があるということになります。
ここで注意する必要があるのは「可能性がある」という点です。
それはなぜか?
そこで、有料老人ホームの定義の②の部分を思い出してください。
②「老人福祉施設、認知症対応型老人共同生活援助事業を行う住居その他厚生労働省令で定める施設でないもの」
つまり、上記②の定義に該当する場合には、有料老人ホームではなくなるわけです。
そこで、この条文の中にある「その他厚生労働省令で定める施設でないもの」という文言の意義を明らかにする必要があります。それが次の条文になります。
(昭和三十八年七月十一日厚生省令第二十八号)
(法第二十九条第一項に規定する厚生労働省令で定める施設)
第二十条の四 法第二十九条第一項に規定する厚生労働省令で定める施設は、高齢者の居住の安定確保に関する法律(平成十三年法律第二十六号)第四条の規定により、登録されている賃貸住宅のうち、厚生労働大臣が定める基準に適合するものとする。
高齢者の居住の安定確保に関する法律第4条の規定により登録されている賃貸住宅というものは、高齢者専用賃貸住宅を含んだ高齢者円滑入居賃貸住宅のことですが、その中で、厚生労働大臣が定める基準に適合するものについては、「厚生労働省令で定める施設」であることが明記されています。
したがって、厚生労働大臣が定める基準に適合する高齢者専用賃貸住宅は、有料老人ホームではないことが明らかになりました。
(厚生労働大臣が定める基準については 「よくわかる適合高専賃」をご参照ください。)
以上のことをまとめると次のようになります。
「入浴、排せつ若しくは食事の介護、食事の提供又は洗濯、掃除等の家事又は健康管理の供与をする事業を行う高齢者専用賃貸住宅であって厚生労働大臣の定める基準を満たすものは有料老人ホームではないが、厚生労働大臣の定める基準を満たさないものについては有料老人ホームである。」